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2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#49 つくばエクスプレスのユニバーサルデザイン
 
曽川 大/ユニバーサルデザイン・コンソーシアム研究員
 
 8月24日、つくばエクスプレスが開通した。最高速度130km/hで、秋葉原〜つくば間58.3キロを最短45分で結ぶ。運営は第三セクターの首都圏新都市鉄道。事業テーマに、環境共生・人間優先・地域創造を掲げ、首都圏北東部の生活環境や産業基盤の整備の中枢を担う。今回は、特に「人間優先」のテーマに注目し、ユニバーサルデザインへの配慮についてレポートする。
 
北千住駅改札口
ホーム
車両
浅草駅から秋葉原駅へ
北千住駅改札口
 
 午前8時、開通したばかりのつくばエクスプレスに乗るため、北千住駅の北改札口に向かう。北千住はJR常磐線と東武伊勢崎線、東京メトロ日比谷線および千代田線が合流し、1日の乗降客数は約163万人に達する東京北部の玄関駅だ。各線の駅は朝夕のラッシュ時に大混雑するが、意外にもつくばエクスプレスの方はそうでもない。オープン初日ということもあり、駅係員やカメラも持った人々の方が目立つくらいだ。北千住〜秋葉原間の運賃が280円と、日比谷線の160円に比べると割高なので、乗り換え客は少ないのだろうと推測する。

 切符売り場から改札口に向かって眺めると、まっすぐな空間が反対側南改札口につながっている。構造上必要な円柱以外、視線を遮る障害物はない。まっすぐな動線に沿って券売機、改札口、エレベーター、トイレ、階段、エスカレーターが配列されているので始めての利用客でも迷うことは無い。視線上には、コントラストがはっきりとした天井サイン。文字やピクトグラムも大きくて見やすい。親切すぎるくらいの情報量だが、公共空間ではこれくらいの配慮があってもよいだろう。

 改札口手前の壁面には、駅構内案内板が設置されている。一つは車いすの利用者や視覚に傷害のある利用者に配慮したもの。誘導ブロックと音声で誘導している。およそ20秒毎に「こちらに構内案内や触地図がございます」という声が聞こえる。手前部分は700ミリの高さで、見て触りやすいように傾斜がついている。音声案内ボタンとともに、点字や凹凸で場所や方向を表現しており、情報に過不足は無い。試しに、切符売り場のボタンを押すと、「現在地の左ななめ後方、約10メートルのところにあります」と教えてくれる。数値で表現しているのがわかりやすい。一般用向けには、駅構内図のほか、乗り換え路線図と駅周辺図が用意されている。情報がすっきりと整理され、アイコンもわかりやすい。

 タッチパネル式の券売機では、切符のほかパスネットや定期が買える。表示文字が大きく、コインの挿入口にも工夫が凝らされており使いやすい。券売機周りはステンレスの棚になっており、鞄や荷物を置くのに便利だ。つくばエクスプレスでは東京メトロ同様、「01秋葉原」〜「20つくば」といったぐあいに駅番号を採用している。漢字表記が理解できない外国人にとってわかりやすいシステムだ。

 自動改札口は7つあり、中央部分に間口が広めの改札口と誘導ブロック付きのものが設置されている。壁面のインフォメーションカウンターへの動線と区別するためだと思われる。インフォメーションカウンターはガラス張りで明るく、内部の様子がわかるので親しみやすい。

 通路中央部分には、男女トイレと多目的トイレがある。壁面には、点字と凹凸表示による化粧室の案内があり、手すりには、化粧室音声案内が設置されている。オストメイトやベビーチェア、多目的シート、手洗い器の位置のほか、便器の数や、和式、洋式便器の区別までがわかるようになっている。多目的トイレの中に入ってみると、縦長の鏡や小さな棚、間接照明など細かい部分にも配慮をしているのがわかる。
 
写真:北千住駅の通路空間   写真:八潮駅の通路空間
 
【写真左:北千住駅の通路空間、写真右:八潮駅の通路空間、両駅ともまっすぐな動線で視認性がよい。】
 
写真:天井サイン   写真:駅構内案内板
 
【写真左:天井サイン、コントラストが適切。これくらいの情報量があれば初めての利用者でもわかりやすい。写真右:駅構内案内板、音声案内ボタンとともに点字や凹凸で場所を案内。】
 
写真:タッチパネル式の券売機   写真:改札口
 
【写真左:タッチパネル式の券売機、表示がわかりやすい。周囲の棚は物を置くのに便利。写真右:改札口、中央部分に間口が広めの改札口と誘導ブロックを設置。改札口のフロア部分を黒にしているのは、周囲とのコントラストで目立たせるため。】
 
写真:インフォメーション   写真:化粧室案内
 
【写真左:インフォメーション、ガラス張りで明るく、内部の様子がわかるオープンな雰囲気。写真右:化粧室案内、オストメイトやベビーチェア、多目的シートなどのほか、便器の数や、和式、洋式便器の区別もわかる。】
 
写真:化粧室音声案内   写真:多目的トイレ
 
【写真左:化粧室音声案内、手すりに設置されている。写真右:多目的トイレ】
 
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ホーム
 
 ホームには、階段、エスカレータ、大型エレベーター(15人乗り)を経由する。階段は、ステップの先端がはっきり色分けされており、昇り降りがしやすい。北千住駅には無いが、秋葉原駅のエスカレーターは、低速・高速運転のものをそれぞれ配置している。階段への誘導には、鳥のさえずり音を使うなど、さりげない工夫も凝らしている。

 ホームに上がると目に付くのがホームドアだ。つくばエクスプレスは、全駅にホームドアシステムを装備している。車両のドアと駅の可動式ホーム柵とが連動して開閉する仕組みだ。コストやホームが狭くなるという欠点があるが、転落事故防止など安全上これにまさる配慮は無い。よく見ると、各ゲートに車両とドア番号が点字表記されている。視覚に障害のある利用者が自分の乗車位置を把握するための配慮だ。さらに事故防止のためにインターホンを設置するなど、安全にも配慮している。

 駅名を示す電飾サインでは、彩度が高い赤の背景に白抜きの文字を採用している。今まで無かった色使いだけにインパクトが強い。電車の発着案内もLEDの色使いがきれいですっきりしてわかりやすい。
 
写真:階段   写真:15人乗りのエレベーター
 
【写真左:階段、階段は先端がはっきり色分けされており、昇り降りがしやすい。写真右:15人乗りのエレベーター、駅の構造によって反対側のドアが開く。】
 
写真:エスカレーター   写真:駅名の電飾サイン
 
【写真左:エスカレーター、速度調整可能で高速用が用意されている。写真右:駅名の電飾サイン、鮮やかな赤が目を引く。】
 
写真:電車の発着案内サイン   写真:ホームのベンチ
 
【写真左:電車の発着案内サイン、すっきりとした色使いと情報量でわかりやすい。写真右:ホームのベンチ、高さが違うタイプを用意している。】
 
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車両
 
 つくばエクスプレスの車両デザインは、先頭形状のシャープなラインと、V字の前面ガラスが特徴だ。ブランド・アイデンティティのスカーレットカラーのラインがシルバーの車体に映える。車体は、リサイクル対応素材(アルミニウム等)を使用。軽量化・省エネルギー化とともに、環境型社会にも対応している。

 運転はワンマンだ。車両にATC(自動列車制御装置)とATO(自動列車運転装置)を搭載しているため、運転手が発車操作を行うと、駅停止まで自動で運転してくれる。

 電車の到着とともに、ホームドアと車体のドアが開く。真っ先に目が行くのが、ホームと車体の10センチほどの隙間。ホームと車両床面との段差はほとんど無いので、安全でスムーズな乗降が可能だ。また、乗降口床面には滑り止め加工を施し、乗降時の安全を確保している。

 ドアの上にある車内案内表示器もなかなか良くできている。これから停車する駅を黄色、終点を赤色のランプで示しているので、今どこの地点を走っているのか一目でわかる。同時に、音声案内で駅名と駅番号を知らせてくれるので、乗り越す心配は少ない。

 車椅子スペースは1編成に2箇所確保されている。手すりや車椅子固定用ベルトとともに、通話式非常通報器を備える。優先席のマークは、窓だけでなくシートにもプリントされている。よく目立つので、たとえ空いているとしても健常者は座る気にはならないだろう。

 電車が走り出すと、思いのほか振動や騒音が少ないのに気が付く。サスペンションなど車両の構造と継ぎ目の少ないレールのおかげだ。
 
写真:つくばエクスプレスの車両   写真:ホームドア
 
【写真左:つくばエクスプレスの車両、先頭形状のシャープなラインと、V字の前面ガラスが特徴。写真右:ホームドア、車両のドアと駅の可動式ホーム柵とが連動して開閉。】
 
写真:ホームと電車の隙間   写真:車内案内表示器
 
【写真左:ホームと電車の隙間、間隔は狭く、段差はほとんど無い。写真右:車内案内表示器、これから停車する駅を黄色、終点を赤色のランプで知らせてくれる。】
 
写真:車椅子スペース   写真:優先席のマーク
 
【写真左:車椅子スペース、1編成に2箇所確保されている。写真右:優先席のマーク、窓だけでなくシートにもプリントされている。】
 
写真:車両タイプA   写真:車両タイプB
 
【写真左・右:車両の座席タイプは2つ。】
 
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浅草駅から秋葉原駅へ
 
 途中、浅草駅のホームに降りてみると、三社祭と隅田川花火大会の壁画が描かれている。均一なホームに地域色を出し、識別しやすくするための工夫だ。

 やがて15分ほどで、終点の秋葉原駅に到着。地下33メートルの深さなので、途中エスカレーターを5回ほど乗り継がねばならない。時計を見ると、地上まで5分ほどかかった。北千住駅同様わかりやすい空間設計で移動もスムーズだが、この歩行距離は少々長く感じる。

 つくばエクスプレスは、安全性や乗り心地も優れ、環境とともにユニバーサルデザインに配慮している。既存の公共交通が改修やサービスの改善を行う際のモデルになるに違いない。
 
写真:浅草駅のホーム   写真:秋葉原駅
 
【写真左:浅草駅のホーム、三社祭と隅田川花火大会の壁画が地域色を出している。写真右:秋葉原駅、コンコースは地下33メートルの深さで、広々としてわかりやすい。ただ、地上までエスカレーターを5回ほど乗り継がねばならない。】
 
写真:秋葉原駅トイレ    
 
【写真:秋葉原駅トイレ、アプローチ全体をスロープで設計。スモークガラスが清潔感を出している。】
 
※季刊ユニバーサルデザイン17号(2005年10月25日発行)では、首都圏新都市鉄道株式会社への取材を通して、駅や車両の設計から守谷駅周辺の開発事業についての記事を掲載予定です。
 
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