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ユニバーサルデザインとは?
 
2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#50 グッドデザイン2005に見るユニバーサルデザイン
 
曽川 大/ユニバーサルデザイン・コンソーシアム主任研究員
 
ユニバーサルデザインの位置づけ
福祉的なイメージの払拭に奮闘する米国のユニバーサルデザイン
グッドデザインとユニバーサルデザイン
多様性に配慮したグッドデザイン
ユニバーサルデザインの位置づけ
 
 49回目を迎える2005年のグッドデザイン賞が発表された。応募件数3,010のうち1,158件が受賞し、「グッドデザイン特別賞」として65件が選ばれた。その中から「ベスト15」「エコロジーデザイン賞」「ユニバーサルデザイン賞」「インタラクションデザイン賞」「グッドデザイン中小企業庁長官特別賞」「日本商工会議所会頭賞」「ロングライフデザイン賞」が選出された。10月25日にはいよいよ「グッドデザイン大賞」が「ベスト15」の中から決定する。

 「日本のデザインは過去の模倣から脱出し、世界のオリジナルになった」と審査委員長の喜多俊之氏。3日間にわたるグッドデザインプレゼンテーションの来場者は29,000人で、携わった審査員は70名にのぼる。これほどの規模のデザインアワードは世界でも稀という。財団法人日本産業デザイン振興会理事長の久禮(くれ)彦治氏は「50周年を迎える来年は、ミラノのサローネでグッドデザイン賞と日本デザインの50年展を予定している」と述べ、本場ヨーロッパへの進出に自信を見せる。

 受賞作品のクオリティには目を見張るものがある。選考基準である「良いデザイン」の一定水準を満たした上、生活、産業、社会においてデザインとしての優秀性と斬新さを評価されただけのことはある。英知と創造性の結晶に改めて敬意を表したい。

 一方で釈然としないのがユニバーサルデザインの位置づけだ。97年にユニバーサルデザイン賞が設置されてからずっと思っていたのだが、「福祉」の考えに囚われすぎていないだろうか。受賞作が福祉的という意味ではない。東洋ガラスの牛乳ビンをはじめ松下電器の全身浴シャワー、トヨタのラウム、OXO(オクソ)のアングルドメジャーカップ、京セラのツーカーなどは優れたユニバーサルデザインだ。ここで指摘しているのは、グッドデザインの選考基準から読み取れるユニバーサルデザインの位置づけである。

 今回はそうしたユニバーサルデザインの現状とあり方を、米国と対比しつつ考えたい。
 
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福祉的なイメージの払拭に奮闘する米国のユニバーサルデザイン
 
 「すぐれたユニバーサルデザインはグッドデザインである」。教育を通してユニバーサルデザインの推進に尽力する米国アダプティブ・エンバイロメンツ創立ディレクター、イレーン・オストロフ氏の言葉だ。米国の一般市場でユニバーサルデザインが浸透しないのは、福祉的なイメージが影響していると言われる。自分とは関係がない特別な世界として一般ユーザーの関心を呼ばないためだ。歴史的背景や法制度など、理由はいろいろあるのだが、一度定着したイメージを塗り変えるのは容易でない。ユニバーサルデザイン発祥の地において、推進者たちは本来の姿を認知してもらうのに躍起だ。
 
写真:イレーン・オストロフ氏   イレーン・オストロフ
アダプティブ・エンバイロメンツを創立し、現在もGlobal Universal Design Educator's Online Newsを発行するなど、精力的に活動している。
 
 ニューヨーク州立大学のエドワード・スタインフェルド氏は、ユニバーサルデザインを再定義することで、一般市場への道筋をつけようとしている。「現在の定義と原則は、機能に焦点を当てている。これはアクセシビリティの概念から発展したもので、もともとリハビリテーションから派生したもの。つまり、補助器具として捉えているのだ。問題は、機能だけでは人々にユニバーサルデザインの採用を説得できないこと。人は、単に使いやすいという理由で製品を購入したり建物を訪れたりはしない。ユニバーサルデザインは、多様性への配慮や選択肢を広げるだけでなく、もっと大きな使命を帯びるべきだ。使い勝手に対して、審美性やサステナビリティ、都会的なセンスなどを統合させねばならない。…ユニバーサルデザインの定義はデザインクオリティとその他先進的なデザイン哲学を反映すべきなのだ。要は、ユニバーサルデザインをできるだけ多くの意思決定者たちがこぞって取り入れるような思想にすることだ」。(季刊ユニバーサルデザイン13号、ユニバーサルデザイン・コンソーシアム発行、2004年6月)
 
写真:エドワード・スタインフェルド氏   エドワード・スタインフェルド
ニューヨーク州立大学工学部教授とIDEA Center(Center for Inclusive Design and Environmental Access)の所長を兼務。都市環境の調査や住宅のユニバーサルデザイン等で実績を上げている。
 
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グッドデザインとユニバーサルデザイン
 
 一方、日本のユニバーサルデザインは市場に浸透しつつある。言葉の響きが新しいデザインスタイルを連想させるのかもしれない。その認識は間違いなのだが、それを指摘するのが今回の主旨ではない。一般市場に大きな影響を与えるグッドデザインがユニバーサルデザインをどう位置づけているかだ。

 端的に言うと、グッドデザインはユニバーサルデザインを過去の枠組みで捉えているのではないかという思いを禁じえない。選定基準は、「
福祉的な視点に配慮し、広範な使用者による使用を可能とした商品および施設等のうち特に優れていると認められるもの」とある。しかし、「福祉的な視点」を強調すると、デザインの課題を「福祉的に」解決することに意識が向かいがちだ。結果、特殊仕様が表面化する懸念がある。ここはむしろ「多様性に配慮し」という言葉の方が望ましい。ユニバーサルデザインの使命は、ユーザーの多様性に配慮しつつ、それをグッドデザインに昇華することであり、「特殊仕様につながりかねない配慮」をわからなくすることでもあるからだ。故ロナルド・メイスがいみじくも述べた「Invisible Design」である。

 「ベスト15」の受賞作であるコクヨのキャンパスノートを評して「
ユニバーサルデザインを超えて美しく使いやすい新しいノートの形を生み出している」というコメントにも訂正を促したい。「ユニバーサルデザインを超えて」という表現からは、ユニバーサルデザインが福祉、言い換えるとアクセシビリティのデザインに止まるというニュアンスが感じ取れる。むしろ、ユニバーサルデザインはデザインの理想である。ここは「超える」のではなく、「ユニバーサルデザインをめざして」という言葉がふさわしい。
 
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多様性に配慮したグッドデザイン
 
 このような視点に立つと、グッドデザイン賞の中にユニバーサルデザイン賞を設けること自体が無意味に思えてくる。ユニバーサルデザインとグッドデザインは限りなくイコールであり、エコロジーやコミュニケーションなどさまざまな領域ともクロスオーバーしているからだ。そこで、多様性に配慮していると思われるグッドデザインをピックアップしてみた。
 
写真:電池がどれでもライト
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. 電池がどれでもライト <松下電器産業株式会社>
     
     単1から単3まで、どの電池でも使える懐中電灯。電池サイズの形をボディラインに生かしつつ魅力的なフォルムに仕上げている。通常の懐中電灯は非常用でデザインも洗練されておらず、普段は引き出しにしまっておくものという意識が強かった。この商品は落ち着いたカラーと安定した形で、インテリアの仲間入りをさせても違和感がない。
 
写真:iPod shuffle(512MB、1GB)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. iPod shuffle(512MB、1GB) <アップルコンピュータ株式会社>
     
     余分なものをとことん削ぎ落とし、音を再生する機能デザインのみに特化。メカに弱いから使えないという言い訳は通用しないシンプルなデザインだ。ガムのパッケージよりも小さい本体には、最大240曲をダウンロードできる。曲を「シャッフル」してランダムに再生するスタイルは、音楽の新たな「気分」を生み出した。
 
写真:加湿器
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. 加湿器 <プラマイゼロ株式会社>
     
     加湿器とは思えないデザイン。浮き袋やドーナッツ、座布団、UFOといったこの形の定番商品を思わず連想してしまう。既成概念を超越し、居間やオフィスの垣根も越えてところかまわずちょこんと座る。ユーモアは感性を刺激する万能薬だ。
 
写真:キャンパスノート(パラクルノ)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. キャンパスノート(パラクルノ) <コクヨ株式会社>
     
     小口が斜めにカットされているのでめくりやすい。しかも、上半分と下半分のカットが逆方向になっているためリバーシブルに使える親切さ。切り口を生かしたストライプ模様も美しい。辞書など、厚手の書籍にはめくりやすくする工夫があるが、薄手のノートにも工夫の余地が残されていたことに新鮮な驚きを覚える。
 
写真:インスリン用注射針(ナノパス33)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. インスリン用注射針(ナノパス33) <テルモ株式会社>
     
     糖尿病治療で欠かせないインシュリン注射の痛みを和らげる画期的な商品。恐怖の克服という原始的なニーズを叶えてくれた。先端を細くしても注射抵抗が増えない「ダブルテーパー構造」を開発し、従来よりも20%細い0.2mmを実現。あらゆる注射針への応用を期待して止まない。
 
写真:金沢21世紀美術館
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. 金沢21世紀美術館 <有限会社SANAA事務所>
     
     「誰でも気軽に立ち寄れる、明るく開放的な美術館」がコンセプト。敷地を活かし、四方からアクセスできる円形構造になっている。外周部の交流ゾーンと中心部の美術館ゾーンで構成され、アクリル扉を開けると空間を連結できる。ユーザー本位のフレキシブルな空間づくりが見て取れる。
 
写真:触れる地球
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. 触れる地球 <竹村真一(京都造形芸術大学 教授、Earth Literacy Program 代表)+岩政隆一(株式会社GKテック 取締役社長)>
     
     触れるインターフェイスをもつ地球儀型ディスプレイ。地球温暖化による砂漠化や海水の上昇、渡り鳥やクジラの軌跡などの地球環境を映し出す。また、1000万分の1(直径1m)のスケールを基準に、地球に対する富士山の高さ(0.3mm)や深海の深さ(0.9mm)、大気の厚さ(1mm)を実感できる。視覚と触覚のインタラクティブな作用が知性と感性を養うユニバーサルな教育メディア。
 
写真:未来モビリティ社会デザインプロジェクト
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. 未来モビリティ社会デザインプロジェクト <トヨタ自動車株式会社+株式会社電通>
     
     コンセプトビークルやロボットのエンターテイメントによる「明るく豊かな社会」を提案。トヨタは、「直面している地球規模の課題を克服し、地球上のすべての人々が等しくモビリティの恩恵を享受できる社会を実現するための具体的な取り組み」と位置づける。ユニバーサルデザインとエコロジーの融合をモビリティで具現化するテクノロジーはさすがと言うほかはない。
 
写真:ダイアログ・イン・ザ・ダーク(まっくらな中での対話)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. ダイアログ・イン・ザ・ダーク(まっくらな中での対話) <特定非営利活動法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン(東京都)>
     
     今回のユニバーサルデザイン賞。最初は意外だったが、よく考えると、なるほど的を得た受賞だと思うようになった。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とは、視覚以外の感覚器官を総動員するコミュニケーション・プロジェクトだ。真っ暗闇の中、視覚に障害のあるスタッフの案内で日常空間を認識する。視覚に障害のある人が鋭敏な聴触覚能力をもつことは周知のとおり。人間の多様性を尊重する意味で、ユニバーサルデザインの本質に触れている。このプロジェクトが五感を駆使したデザインの新領域を開拓することを期待したい。
 
写真:ペット乗せ自転車(DOG BICYCLE)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. ペット乗せ自転車(DOG BICYCLE) <有限会社SAKOH(徳島県)>
     
     ペットのモビリティにも配慮するユニバーサルデザインの一例。愛犬用車いすは、障害そのものに周囲の注目を集めてしまうが、これならば、健常犬も障害犬も等しく飼い主と移動できる。安定性や飛び出し予防などの安全面にも抜かりはない。少々がに股になるようだが、相乗り風景がご愛嬌でカバーしてくれる。
 
写真:オフィス向けパテションユニット(ラウンドパテション)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. オフィス向けパテションユニット(ラウンドパテション) <森田アルミ工業株式会社(大阪府)>
     
     アルミ押出し材のフレームに伸縮性の高い袋状のクロスカバーを被せたパティション・ユニット。柔らかい曲線に囲まれた軽やかな空間を自由に演出できる。組み立てしやすく、布地の洗濯やカラーバリエーションにも対応している。金属やプラスチックに囲まれたオフィス環境にあって、ワーカーへの癒し効果が期待できる。
 
写真:サムターン(パタンテ)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. サムターン(パタンテ) <株式会社オプナス(東京都)>
     
     セキュリティとユニバーサルデザインは相反することが多い。防犯のために構造を複雑化するほど、高齢者や子どもたちにとって使いにくくなるためだ。サムターンは、独自のツマミ機構とわかりやすいデザインでこの課題を克服。さらに、セーフティロック機能を設けてピッキング対策にも抜かりが無い。
 
写真:ユニバーサルデザイン鉄瓶シリーズ
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. ユニバーサルデザイン鉄瓶シリーズ <南部鉄器協同組合(岩手県)/岩手県工業技術センター>
     
     400年の歴史をもつ伝統工芸品にユニバーサルデザイを導入。ユーザーの使用状況を分析し、「注ぐ」「沸かす」「持ち上げる」といった使い勝手を向上。斜めにしても蓋が落ちないしくみや持ちやすい取っ手などにも工夫を凝らす。伝統を踏襲しつつ、生活環境にマッチしたデザインに仕上げている。不振に苦しむ地場産業振興の手本となるはず。
 
写真:百年物語プロジェクト(新潟発・初の国際ブランド構築プロジェクト)
【Photo:財団法人日本産業デザイン振興会】
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  1. 百年物語プロジェクト(新潟発・初の国際ブランド構築プロジェクト) <財団法人にいがた産業創造機構>
     
     ロングランの製品にはユニバーサルデザインが息づいている。市場の荒波にもまれ、機能や形態が絶え間なく改善・強化なれながら脈々と引き継がれるためだ。百年物語は「百年後にも大切にしていきたい生活文化を維持し、継承していくための道具」をテーマに、刃物をはじめとする新潟の地場産業を国際ブランドに育てるプロジェクト。よい物を長く使ってもらうという、正当な生活スタイルのプロデュースでもある。日本型ユニバーサルデザインが地方から芽生えたことに感慨を覚える。
 
※グッドデザイン2005については、1月15日発行予定の季刊ユニバーサルデザイン18号に詳細を掲載予定です。
 
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