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2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#65 Design for Ourselves
 
千葉大学工学部「デザイン工学総合プロジェクト」
 
小杉ももこ/ユニバーサルデザイン・コンソーシアム研究員
千葉大学自然科学研究科環境デザイン研究室
 
取材協力
 

千葉大学工学部デザイン工学科意匠系

 
 
     
 

デザインは生活環境を豊かにするためにある。文化や社会、経済などと関係し人間の多様な要求に応えるためには、総合的な視点が不可欠だ。千葉大学工学部デザイン工学科意匠系では、人間生活工学、環境デザイン、視覚伝達デザインなど9つの研究分野が専門性を活かしつつ、チームによるユニークな卒業研究の方式「デザイン工学総合プロジェクト」に取り組んでいる。

 

社会性をもつテーマ
 
 「デザイン工学総合プロジェクト」は今年で7回目を迎える。1999年にこの方式を提唱して以来、牽引者的役割を担ってきたのが環境デザインの清水忠男教授だ。「多様な分野のもつ特色を活かして融合させ、総合的にアプローチできる人材を育てたいと考えました。一緒に調査をして、ともに考え、基本を共有し、追究すべきテーマを見出す。その際、テーマは社会的に意義のあることとしました」。社会性を取り込むことは、ユニバーサルデザインにつながる。初年度のテーマは「高齢社会に貢献するデザイン」。さらに、「やさしさ」や「わかりやすさ」などUDのキーワードを使ったテーマをもとに進められてきた。今回は、15名の学生たちが6名の教員の支援を得てテーマを絞り込んでいった。
 「初期にめざしていたのはDesign for youでした」と清水教授。要求が充たされればユーザーは笑顔を見せる。その笑顔を見るためにデザインしようとした。ところが、ユーザーとデザイナーはどちらも生活者であり、デザイナー本人も充たされなければならないことに気づく。そこで、生活者が自らのために、ともにデザインする「Design for Ourselves」という考え方にたどり着いた。
 
  写真:清水忠男教授
 
 
ユーザーとユーザーとしてのデザイナーの協働
 

 「Design for Ourselves」を実践するため、学生たちは地域の多様な人々を巻き込んで「デザインをする会」を立ち上げた。子供をもつ父親や母親、同大学の生涯学習プログラムに参加する高齢者、商店街の店主、さらに外部アドバイザーを加え30名ほどが参加した。1年半の間に50回の会合を重ねていった。
 「デザインをする会」では具体的なテーマを「安全・安心」、「つながり」、「モラルマナー」の3つに絞り、課題の設定から問題点の抽出、アイデア展開、具体化までを地域の人たちと一緒に行った。しかし、異なる世代が協働するのは容易ではない。特に初期においてコミュニケーションについて戸惑いが生じた。互いに何を考えているのか通じない。年配者とのやり取りに慣れない学生たちは、叱責を受けることもあった。そこで学生たちは、会合の進め方や情報共有の方法などについて文献にあたるなどして猛勉強をした。ホワイトボードにコメントを書いたメモを貼って整理するなどして、ディスカッションを重ねていった。その結果、状況は改善され、外部からの参加者たちも街に出て写真を撮るなどして自分たちの思いを伝えるために工夫するようになった。
 

  写真:「デザインをする会」には地域のさまざまな人々が参加
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
  写真:ホワイトボードにアイデアやコメントを書いたメモを貼り、ディスカッションを重ねていった
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
 
発想を形にするプロセス
 
 「社会的問題意識を共有化しようとすると、抽象的な話になりがちです。これを具体的解決に向けて共有化されたイメージとしていかに展開できるかが、デザインにとっては重要なのです」と清水教授。それぞれの実体験を文字や絵で記録し、その問題解決の手がかりを一緒に紡いでいく方法が生み出された。
 生活環境での具体的なシーンとユーザーを明確にした課題の設定、アイデア展開、学生たちが制作した絵や模型をもとにしたディスカッション。さらに、先行事例との照らし合わせによって、オリジナリティのあるデザイン方針が抽出されていった。
 学外からの参加者の一人は「最初は抽象的でわかりにくく、最後までいくのかと不安でした。それが具体的に表現されるにつれ、新鮮な驚きに変わっていったのです」と語り、発想を形にするデザイン能力への賞賛を惜しまない。試行錯誤の末、チームごとに納得するデザイン提案が生まれた。「お互いの気持ちを伝え合い、理解しあい、形にする手段が“デザインをする会”でした」と学生たち。
 「デザインをする会」は現在、大学院に残ったメンバーたちに引き継がれている。具体化に向け、学外の組織や企業、行政等の協力を得ながら活動を継続していくという。
 
  写真:学生たちのデザイン能力について語る参加者
 
    写真:「お互いの気持ちを伝え合い、理解しあい、形にする手段が“デザインをする会”でした」
 
 
「デザインをする会」で生まれた提案
 

ここでは20の提案の一部を紹介する。2つは具体化に向けて意匠登録を申請している。
 

  cradle/座った人をフレームで囲み、ソファ全体がゆりかごのようにわずかに揺れる。囲まれた空間をつくることで安心感や落ち着きが、揺れることで楽しさと心地よさが得られる
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
  danran/組み合わせ方によってさまざまなくつろぎの形を創出する
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
  まちのキッチン/商店街の空き店舗を利用し、大勢で調理しやすく、多様な人々の特性を考慮した環境をつくりだす。さまざまな交流の場を生み出す効果が考えられる
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
  信号アニメ/歩行用信号機のピクトグラムにアニメーションを用いており、信号の待ち時間を楽しく演出する
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
   
 
  花灯(はなび)/昼はもちろん夜も美しく演出することで通る人をもてなす
写真提供:千葉大学工学部デザイン工学科意匠系
 
   
 
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